強化恵比留シナリオ考察
※2022年3月8日にTwitterで公開した内容の再録です。当時の情報で作成されております
私が強化恵比留のシナリオについて解釈した場合、
闇野が自己肯定を取り戻し、喪失の恐怖を乗り越えるストーリー
となります。
強化恵比留のストーリーについておおまかに考えると
「闇野がルミナちゃんのおかげで自分の弱さを受け入れてハッピーエンド!」
という印象になるかと思われますが、以下のようにハッキリと説明されていない点があります。
●闇野の弱さと強さとは何か
●闇野が強さを求める理由
●闇野が少年の姿になった訳
●闇野がルミナちゃんを拒めない原因
●闇野とルミナちゃんが解決すべき問題
●闇野がルミナちゃんのために行動した背景
●最後に突然出てきた子供時代の写真の価値 etc…
これらの疑問を解説するために、私は以下の解釈を構築しました。
◆闇野のメンタルは二分され不安定である
◆闇野の魂はルミナちゃんの支配下にある
◆ルミナちゃんは闇野の自己肯定と喪失恐怖を癒しに来た
円卓高校のシナリオや闇野の個別イベント等、既出情報との関係を示しながら、各描写を掘り下げて解説していきます。
◆解説にあたっての用語
●エビキャ……クソダサ厄介ヘルメットことエビルキャップのこと。
●エビループ……エビキャの力で闇野が行うタイムリープのこと。
●闇野……「闇野栄剛」個人を示す言葉として使用する。
●強化円卓……2018年秋および翌年頭に配信されていた円卓高校の限定シナリオ。
●トゥルールート/バッドルート……強化恵比留6月4週の選択肢で「心に正直になれ」を選んだ後の展開を
トゥルールート、「弱い心と決別しろ!」を選んだ後の展開をバッドルート、と仮称します。
闇野のメンタルは二分され不安定
強化恵比留のシナリオは闇野の「弱い心」に焦点が当てられていました。
闇野の精神は強い部分と弱い部分に分かれており、双方が問題を抱え不安定な状態だと言えるのです。
闇野の精神がどのように分離し、強化恵比留に至るまでに如何なる問題が発生しているのか、彼の過去から順に推察し説明していきます。
◆安定した子供時代
◆両親の喪失によるショック
◆弱い心の”分離”
◆強い自己の再構築
◆不安定な自己肯定の問題
安定した幼少期
闇野が本当に子どもだった頃は、そこそこ幸福に過ごしていたと思われます。
野球が好きで、強くなるための努力ができる良い子だったことでしょう。
▲「闇と光と追憶と」お知らせ画像
これは強化恵比留実装前の10月17日に、アプリ内の『「闇と光と追憶と」近日登場』というお知らせで掲載されていた画像です。
闇野が子供服を着用しており、右の人物がスパイクを履いていません。
これは強化恵比留の時間軸ではなく、おそらく闇野の過去の実体験に由来するシーンでしょう。
この点からルミナちゃんの容姿は闇野の空想ではなく、実在の人物に似ていると考えられます。
両親の喪失によるショック
何らかの要因によって両親がいなくなります。
作中において子供時代に両親から撮ってもらった写真が家にそのまま残っており、かつ闇野はエビループの影響によるキャラの移動(世界線上の配置の変動)を認識しています。
もしエビループのせいで人物が再配置され両親がいなくなっているのなら後述の写真は世界の状況が変わった影響で消失してしまうかもしれませんし、闇野は再配置の影響によってはいずれまた両親に会えると知っているはずです。
よって、両親がいなくなったのはエビループを始める前と考えるのが妥当だと思われます。
この出来事が闇野の中で深い傷になっており、大事な人でも自分の前からいなくなってしまうという喪失恐怖を抱えることになります。
弱い心の“分離”
寂しさや悲しさなどのつらい感情を一人で処理できなかった闇野は、それらを「弱い自分」として自分から分離し拒絶します。(心の防衛機制でいう「分離」対処)
自分の感情をそのまま受け入れず、許せないものだと否定することで「この苦痛は自分のものではない」と遠ざけてダメージから心を守ろうとします。
「両親のようにいなくなってしまうかも」という恐怖を抱えた闇野は他人を頼ることができず、一人で問題に対処しようとしたため、このような無理のある手段を選んでいると思われます。
強い自己の再構築
自分で自分の感情を否定することによりボロカスになっている自己肯定を補い、かつ「弱い自分」をより乖離するために、闇野は“許せる”自己として「強い自分」を作ります。
「強い自分」だと思える間は「弱い自分」ではないと自覚されるため、その間だけ自己肯定することができ、一時的に安心できるのです。
弱い自分を分離する際にありのまま(無条件)の自分の感情を否定しているため、強い自分を作るときも「〇〇なら弱くない」と条件を付けて自分を区別する必要があります。
その条件こそが、言ってしまえば【強さへの意志】なのだと考えられます。
強固な精神力を持ち、強くなろうと常に高みを目指し、そのための手段を取り続ける。
闇野はその状態でもって自分を「強い」と思うことが出来るのです。
闇野がイベント中によく「精神力が強い」や「心が強い」などと言われるのは、ここで構築された「強い自分」だけを人に見せているからだと思われます。
不安定な自己肯定の問題
受け入れられない不都合なものを「弱い自分」として拒否し続ける限り、闇野は【強さへの意志】を持つ「強い自分」しか許せません。
強い自分であり続けるために不都合なことは弱い自分として捨て、更に弱さを拒絶します。
本当に心が強いなら、弱い自分を否定せずに受け入れて成長すべきですし、強い自分として過ごして何の問題も無いならそもそもルミナちゃんは発生しません。
これまで描写されてきた強い闇野の姿は、問題を抱えた状態なのだと考えられるのです。
更に面倒なことに闇野本人がその問題を自覚していません。
弱い自分を認めて受け止めてやらないから、原因に気づかないまま精神を不安定にし、安心して存在し続けるためにその不安すら否定して強さを求め続けています。
闇野の言う暗闇は、不都合から目を逸らすために彼自身が作り出しているのです。
上記の内容をまとめると、
◆闇野は両親喪失のショックから「弱い自分」を切り離す
◆弱い闇野は認めがたい感情を押し付けられ存在を否定される
◆強い闇野は存在するために【強さへの意志】を満たし続けなければならない
という状況になっています。
闇野のメンタルは喪失による恐怖のせいで「弱い」と「強い」に二分されており、
その両方が100%の自己肯定ができず不安定な状態にあるのです。
闇野の魂はルミナちゃんの支配下にある
強化恵比留のストーリー中、闇野は少年の姿になり、ルミナちゃんと仲良く過ごしています。
しかし、これまでに描写されてきた通常時の闇野は自分の価値観を重視する姿勢が多く、彼が一転してルミナちゃんの意見をほいほい受け入れている点に私としては違和感が残ります。
この状況を「闇野の魂がルミナちゃんの支配下にあるため」という解釈に基づいて考えると、闇野が彼女の意見を受け入れてしまう理由や、少年の姿になってしまった原因の説明が可能です。
強化恵比留以前の描写を踏まえながら解説していきます。
◆闇野は自分と他者を区別する
◆魂の所有による他者支配
◆ルミナちゃんによる魂のエネルギーの収得
◆魂の分離による姿の変質
◆ルミナちゃんは闇野の魂を支配している
闇野は自分と他者を区別する
闇野は基本的に自分の力しか信じませんし、他者の価値観との距離感を保っています。
もちろん他人の意見を認めることもありますが、全てを受け入れるわけではありません。
そんな闇野が突然に現れたルミナちゃんの言うことを簡単に信じてしまう状況は、無意識に彼女のことを求めているためというだけでは、十分な説明ではないと思われます。
闇野がルミナちゃんから与えられる情報を受け入れてしまうのには別の原因があるのです。
魂の所有による他者支配
あまり知られていませんが、闇野は人の魂を奪って相手を操ることができます。
円卓高校で望戸君を操って心身に影響を与えている能力です。
恵比留高校では、闇野の所有しているソウルジェイルに御厨ちゃんの魂が囚われています。
高校中のイベントやパワクエのテキスト等から分かるように、御厨ちゃんは自身の魂を所有している闇野の判断や指示に対し従順な態度をとっています。
以上から「魂を奪うことで相手をコントロールできる」力が存在すると推察できるのです。
ルミナちゃんによる魂のエネルギーの収得
強化恵比留の5月2週や甲子園中でのイベントなどで描写されるように、ルミナちゃんは魂のエネルギーによって作られています。
また、彼女はエビキャに蓄えていた魂のエネルギーが失われたタイミングで登場するため、エビキャのエネルギーはルミナちゃんの中に移動していると推測できます。
言い換えれば、登場時点でルミナちゃんは魂のエネルギーを所有した状態なのです。
魂の分離による姿の変質
魂と外見の関係については、聖良ちゃんの描写を踏まえて考えていきます。
恵比留高校により偵察された聖良ちゃんは、偵察時に映る白黒合体したマネージャー姿から、ダンジョン高校シナリオと同じように白と黒に分かれてしまいます。
一度精神が分離した人間は、再度分離する時に過去と同じ分かれ方をするのです。
ここで、先章で触れた闇野のメンタルが置かれている状況を振り返ると、闇野は両親がいなくなった苦痛から自分の心を「弱い」と「強い」に分けています。
聖良ちゃんと同様に、闇野にも精神が分かれた跡があるのです。
もし偵察された聖良ちゃんと同じように闇野の魂が奪われてしまう事態が生じた場合、闇野は最初に弱い自分を分離したときの姿――少年の姿になってしまうと思われるのです。
邪気に染まっていたり化け物の姿になれたり、闇野には普通の人間の範疇ではない面があるので、魂の影響で肉体そのものが変質する特殊性を仮定することも出来ると考えられます。
ルミナちゃんは闇野の魂を支配している
ここまで述べて来た内容をまとめると、下記となります。
これらを元に、強化恵比留中における闇野の状況を推測すると、
闇野はルミナちゃんに魂を奪われ彼女の影響を受けるようになってしまっており、
魂が奪われたが故に過去に弱い自分を分離したときの姿になってしまった、と考えられます。
ルミナちゃん登場時、エビキャに蓄えていた魂のエネルギーが彼女に奪われてしまいますが、おそらくエビキャ所有者である闇野の魂がその中に含まれているのではないでしょうか。
魂を奪うことで相手を支配下における話をしましたが、エビキャ所有者である闇野とパワプロ君は、エビキャの都合が良いように思考が変質することがあります。
この点から「闇野はエビキャに魂を奪われている」と推測することが可能です。
よって、エビキャからルミナちゃんへ闇野の魂の支配権が移動していると考えられます。
本来は強固な意志を持つ闇野が、ルミナちゃんから言われたことに流されやすく抗えないのは、魂をルミナちゃんに所有されているせいで彼女の影響を受けてしまっているからなのです。
故に、ルミナちゃんからの支配が薄らぐタイミングで違和感に気づくことができます。
また、魂が奪われることで聖良ちゃんと同様の現象が発生し、闇野の身体は過去に分離した「弱い自分」の姿になってしまいます。
逆に言えば、闇野が小さくなっている原因はルミナちゃんに魂を奪われているせいなので、彼の精神が抱える問題を解決しなくても彼女から魂を取り戻せば闇野は元の姿に戻れるのです。
闇野が少年化しルミナちゃんの言うことに影響されるのは、彼女の存在理由や闇野が抱える問題のせいではなく、闇野が彼女に「魂を奪われた」からです。
他校で通常の闇野とルミナちゃんをデッキに入れても闇野が彼女に反応を示さないのも、魂を奪われなければ闇野は通常通りの精神・肉体でいられるためだと考えると自然です。
ルミナちゃんは闇野の自己肯定と喪失恐怖を癒しに来た
シナリオ中でルミナちゃんは「えーくんの想いから生まれた」存在とされています。
彼女は何のために生まれ、何を成しに来たのでしょうか。
私が解釈するに、ルミナちゃんは精神二分により闇野が抱えている自己肯定の不安定さ、その原因となった喪失恐怖を癒しに来たのではないでしょうか。
故に、問題を解決した闇野は強さと弱さを共に持った自分を認め、過去を放棄せずに抱きしめて歩んでいけるようになったと思うのです。
以下の流れで説明していきます。
◆闇野の抱えている問題とその原因
◆弱い心の受容
◆喪失恐怖の再発
◆喪失恐怖の克服と子供時代の写真
◆強くて弱い闇野の未来
闇野の抱えている問題とその原因
最初の章で触れたとおり、喪失のダメージで闇野の心は「弱い」と「強い」に二分されており、弱い自分は存在を否定され、強い自分は【強さへの意志】に縛られています。
私は、闇野の願いの根幹は弱い/強い自分ともに共通であり、
かつて失ってしまった、不安の無い自己存在肯定の再獲得だと考えています。
もし、ルミナちゃんが弱い闇野の「弱い自分を認めてほしい」という願いを叶えるのであれば、強い闇野の「弱い自分を拒否し強くなりたい」という願いを破棄することになります。
しかし、ルミナちゃんは闇野の強い面も弱い面も否定しません。
喪失を恐れ、自分をありのまま愛することのできない弱い/強い闇野が現在求める想いは、「自分の存在を100%肯定できない不安定な状態から抜け出したい」という同じものだからです。
彼女はその想いこそを叶えに来たのです。
弱い心の受容
ルミナちゃんやパワプロ君たちの影響を受けた闇野は、否定し続けていた自分の弱い部分が存在しても大丈夫なのではないかと感じ始めます。
不都合なものを自分から分離して拒絶するのではなく、ちゃんと受け入れることを理解します。
弱い自分を否定しなくて良いのなら、条件をつけて強い自分を肯定する必要がなくなります。
闇野は自分の存在や感情をありのままに認められるようになり、強い/弱い闇野はやがて元の1つに戻っていきます。
本来の闇野は「強くて弱い」のが自然なのです。
重要なのは、闇野が弱い自分を受け入れるためにルミナちゃんが必要不可欠な点です。
そもそも闇野は他人からの評価を素直に受け取らないので、いくら周囲から「弱くても大丈夫」と言われても簡単には意見を変えられません。
闇野が他者の意見を受け入れ、自分の考えを変えられるようになったのは、強化恵比留の「闇野がルミナちゃんの影響を受けてしまう」特殊な状況ゆえと考えられます。
喪失恐怖の再発
闇野は自己存在の肯定により心の問題を解決した……はずが、ここで別の問題が起こります。
闇野の精神が問題を抱えた原因は両親との離別による喪失への恐怖です。
精神の状態を多少改善しても、根本となった恐怖への対処の仕方を闇野はまだ知りません。
今度はルミナちゃんの喪失を恐れ始めるのです。
喪失恐怖の克服と子供時代の写真
闇野はルミナちゃんの喪失を回避しようとしますが、これは彼女のためだけではなく、自分のための行動でもあります。
彼女が自分の求めるものを与えてくれた大切な存在であるからこそ、両親と同じように失うことが闇野にとっての恐怖になっているのです。
だからこのセリフが出てくる訳です。
いつもの闇野が見せる狡猾さも屁理屈も無い、幼さの感じられる言葉だと思います。
「自分のことが大切ならば、いなくならないでくれるはず」という愛情の確かめであり、確かめた愛情でもって喪失の回避をしようとしているのかもしれません。
闇野はずっと喪失の恐怖から逃げてきました。
故に恐怖への対応の仕方を子供の頃から学べていないのです。
(素直に感情を伝えられているのは、闇野の成長の証だと思われます)
しかし、闇野が喪失への向き合い方をちゃんと身につけなくては、また苦痛から逃げ出すか、ルミナちゃんではない別の誰かに依存することになってしまいます。
これを乗り越えさせることで、ルミナちゃんは闇野を救うのです。
甲子園決勝後に、闇野は両親の荷物から子供時代の写真を見つけた話をします。
これは闇野が両親との別離の記憶に向き合い、喪失を経ても自分がちゃんと愛されていた事実は変わらず残っていると受け止めたこと、つまりは喪失の恐怖を乗り越えたことを表しているのだと考えられます。
強くて弱い闇野の未来
両親と同じように闇野はルミナちゃんを失います。
しかし、喪失への向き合い方を学んだ闇野はもう苦痛から逃げることは無く、彼女が自分をどれほど想っていてくれたかを事実として受け止めることが出来ます。
こうして弱い自分も強い自分も全てそのまま認められるようになった闇野は
出会いと別れを受け入れて未来へ進んでいけるのです。
まとめ
以上のように、強化恵比留シナリオの疑問点を説明するために考えた、私なりの解釈について解説いたしました。
解釈のポイントをまとめると、次の通りです。
◆闇野のメンタルは喪失恐怖により弱い/強いに二分され不安定である
◆闇野の魂はルミナちゃんの支配下にあり、心身に影響が出ている
◆ルミナちゃんが闇野の自己肯定と喪失恐怖を癒してくれたので、
闇野はありのままの自分を受け入れて未来に進んでいける
これらの要素を踏まえて、強化恵比留は
闇野が自己肯定を取り戻し、喪失の恐怖を乗り越えるストーリー
であったと考えられるのです。
閲覧ありがとうございました。
追加情報が出て加筆修正する際は別の記事で解説する予定です。
おまけ。
この解釈を元に強化恵比留のストーリーを再確認する記事はこちら。